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学校を変える いじめの科学  和久田 学より その14

第16章 二次障害としてのいじめーいじめ重大事態に含まれる、気になるケース

・文部科学省(2017)「いじめの防止等の為の基本的な方針」重大事態の意味について

*児童生徒が自殺を企図した場合
*身体に重大な傷害を負った場合
*金品等に重大な被害を被った場合
*精神性の疾患を発症した場合

*不登校の期間が年間30日の場合

*児童生徒の保護者から、いじめにより重大な被害が生じたという申し立てがあった時は、その時点で学校が
「いじめの結果ではない」あるいは「重大事態とは言えない」と考えたとしても、重大事態が発生したものとして
報告、調査等にあたる

・二次障害とは、身体的な傷害など、生まれつきの特性への対応が不十分であるために生じる二次的な問題を言う。
たとえば、ADHDの症状として衝動性が高いということがある。その結果、𠮟られることが多くなる場合がある。
そうすると彼らの自己肯定感が下がり、さらに暴力行為など、二次的な問題が引き起こされることがある。


終章 教育に科学を

・心の底からいじめを「必要悪」だと考えている人がいる。例えば、「人には強いものと弱い者がいる」
「弱肉強食の世の中を生き抜くには、いじめなどに負けてはならない」「いじめは子どもたちが乗り越えなければ
ならないハードルだ」といった、いじめを肯定する考えである。
特に今、40代から50代といった世代に多いかもしれない。彼らが子どもだった頃、学校の教師が子どもを平手打ち
にするのは当たり前、先輩が後輩をしごくのは当たり前だったからだ。
こうした人たちに対し、明確にしておかなければならないことがある。私たちの社会は進歩するとういうことだ。
進歩するに従って、以前は許されていたことが許されなくなる。価値観ががらりと変わることさえある。~中略~

これは社会、いや、教育の進歩だと捉えるべきだろう。~中略~

・これまでよりも1人ひとりの違いを認め、互いを尊重する社会を作る。そういう社会の構成員になる子どもたちは
子ども時代からいじめについて学び、いじめをなくすための行動をとるように努力する。
それが彼ら自身を守り、社会の発展を促すからだ。


# by ckdmhrbb | 2025-08-24 06:55 | 最近読んだ本より | Comments(0)

学校を変える いじめの科学  和久田 学より その13

第15章 わが子が加害者・被害者になった時、保護者はなにをなすべきか

・子どもの発達科学研究所が2014年に小学生4年生1914人を対象に行った調査によると、子どもの被害体験は
親が報告を受けている被害体験の5,3倍だった。いじめの種類による差は大きく、悪口、からかいなどのいじめ、
仲間はずれなどの社会的いじめは保護者が報告を受けている3倍程度だったが、性的いじめ、ネットいじめになると
24倍にもなっていた。(2015)

・わが子がいじめ加害者になったら

*わが子がいじめをしていると聞いた時、親はつい「いじめは誰でもがやることだから、大きな問題ではない」と
考えたり、「単なる悪ふざけを大きな問題にしすぎる」と学校や他の大人の対応を非難したりしたくなる。
これは親の防衛本能といえる。

*親はいじめ加害を容認しないという一貫した態度をとらなければならない。なぜなら、理由によっては許される
言葉巧みに言い逃れできる、などという学習の場にしてはいけないからだ。

*親は子どもに対して自分の気持ちと同じように相手の気持ちを考えるよう、日常的に働きかけることが大切だ。
例えば、いっしょにテレビを見たりゲームをしたりするとき、いろいろな人の気持ちについて話し合うようにする。
子どもが学校での様子を語った時、周りにいる人の気持ちについて尋ねるのである。
「あなたはこのとき、どういう気持だった?じゃあ、相手の○○さんは、どう考えていたと思う?」のような
問いかけが良い。こうした働きかけは、いじめ予防に役立つだけでなく、子どもの内言語を豊かにし、
思慮深い行動を増やすことが期待できる。
もう1つ、スキルを身につけさせることについては、より具体的な対応が必要だ。
今回のいじめ加害について、その状況や理由が明らかになったら、また同じような状況になった時、どのように
すべきか、親が一緒に考えてみるのだ。~中略~
状況は様々だが、大人が一緒にシュミレーションをすることで、少なくとも同じ状況に陥った時に間違った行動を
しなくて済むようになる。それは子どもに大きな安心感を与えるだろう。

・わが子がいじめ被害者になったら

*大切なのは、過剰にも過少にも反応せず、子どもの「いじめ被害」の話を注意深く聞いていくことだ。
大切なのは客観的な事実と、それをつらいと感じた子どもの心なのである。

いじめ被害の事実を知ると「隙を見せるからやられるんだ」「やり返せばよかった」「違う方法をとればよかった」
などと考えてしまうことがあるが、それを絶対に言葉にしてはならない。

*いじめ被害にあった子どもは当然傷ついている。その一方で自分に責任があるのではないかと心配になっている。
「自分が失敗したからいけない」「自分が弱いからいじめられる」「みんなが相手にしてくれるんだから文句を
言ってはいけない」などと考えてしまうことがある。
しかし、いじめの被害にあった子どもが悪いということは絶対にない。

*いじめは被害者とその保護者だけで解決することはできない。深刻であればあるほど、子ども同士ではどうにも
できず、関係する大人が真剣に介入することが必要である。
いじめ防止対策推進法の時代である。必ず学校に連絡を入れ、それでも難しい時は教育委員会、行政機関などに
相談をしていかなければならない。




# by ckdmhrbb | 2025-08-23 11:59 | 最近読んだ本より | Comments(0)

学校を変える いじめの科学  和久田 学より その12

第14章 いじめが生じた後の具体的介入

・いじめに関してはさまざまな調査が行われているが、「どの子どもにも、どの学校においても起こり得る」
とする文部科学省の認識は正しい。したがって、いじめ被害を訴えた子ども、いじめ加害を行っていることが
明らかになった子どもだけを抽出して指導するのでは不十分である。

・文部科学省が発表した「いじめの防止等のための基本的な方針」(2013)から引用
*いじめられた児童生徒から、事実関係の聴取を行う。その際、いじめられている児童生徒にも責任があるという
考え方はあってはならず、「あなたが悪いのではない」ことをはっきりと伝えるなど、自尊感情を高めるように
留意する。

*家庭訪問等により、その日のうちに迅速に保護者に事実関係を伝える。

*いじめられた児童生徒にとって信頼できる人(親しい友人や教職員、家族、地域の人等)と連携し、いじめられた
児童生徒に寄り添い支える体制を作る

*必要に応じていじめていた児童生徒を別室において指導することとしたり、状況に応じて出席停止制度を活用
したりして、いじめられた児童生徒が落ち着いて教育を受けられる環境の確保を図る。

・兵庫県教育委員会(2013)「いじめ対応マニュアル」
*いじめられた子どもに対して
 事実確認とともに、まず、つらい今の気持ちを受け入れ、共感することで心の安定を図ります
 「最後まで守り抜くこと」「秘密を守ること」を伝えます
 必ず解決できる希望が持てることをつたえます
 自信を持たせる言葉をかけるなど、自尊感情を高めるように配慮します

*いじめた子どもに対して
 いじめた気持ちや状況などについて十分に聞き、子どもの背景にも目を向け指導します
 心理的な孤立感、疎外感を与えないようにするなど、一定の教育的配慮の下、毅然とした対応と粘り強い指導を
 行い、いじめが人として決して許されない行為であることや、いじめられる側の気持ちを認識させます

・いじめ加害者への支援
最もやってはいけないことは、いじめ事象を表面的にのみ捉えて、「よくあること」「たいしたことはない」
等と過小評価することだ。

・いじめ被害者への支援
最も注意しなければならいことは、子どもが言っていることを過少にも過大にも評価しないことだ。
つまり「そのくらい我慢すればいい」「騒ぐほどのことじゃない」と過小評価すべきでないし、逆に感情的に
騒ぎ立てるべきでもない。事実は事実として把握しなければならない。

・スキルが不足している子どもが不幸にもいじめの被害者になるケースは少なくないが、だからといって
いじめられてもよい理由にはならない。むしろ、子どものスキル不足を放置したまま、集団の中に入れてしまった
大人の側に問題があると言えるだろう。
子どもの発達科学研究所が行った調査によると、特別な支援が必要な子どもがいじめ被害にあうリスクは
そうでない子どもの4倍という結果が出ている。逆に言うならば、特別支援の不十分さが、子どものいじめに
結びついているのだ。いじめはやはり大人の側の問題なのである。


# by ckdmhrbb | 2025-08-22 12:24 | 最近読んだ本より | Comments(0)

学校を変える いじめの科学  和久田 学より その11

第13章 学校風土を改善する

・学校風土への注目は今に始まったことではない。100年以上前から学校風土が子どもの行動に影響を
与えている事実に研究者たちは気づいており、世界中で学校風土に関する研究が行われている。

学校風土は「教師と児童生徒の学校生活の経験パターンから来るもので、学校の決まり、目標、価値観、
人間関係、授業実践、組織体などを反映したもの」と定義づけている。
良い学校風土を保持することは、将来、民主主義社会で生産的で満足のいく生活を送る可能性が高い
若者を育てることになる。またこうした学校風土は児童生徒とその家族、教職員が一緒になって作るものとされる。
タバら(2013)らは学校風土に関する206の研究を集めて検討し、学校風土には次の5つの領域があるとしている。

*安全:規範やルール、身体的な安全、社会的・精神的安全など。
*関係性:違いを尊重すること、学校への所属感、社会的支援、リーダーシップなど
*教えと学び:社会性や情緒の教育、倫理教育、市民教育、学力支援など
*学校改善のプロセス:学校が組織として学校風土を改善しようとしていることなど

・学校風土の概念は非常に重要であると捉えざるを得ない。私たちの経験からもわかるように、
楽しい学校、良い雰囲気の教室では、問題は起こりにくくなる。いじめはもちろん、子ども同士のトラブルも
少なくなるだろうし、先生が叱ることも減るだろう。そうなれば、学習に集中することが可能になり
学力も向上する。ある意味で学校風土の改善は、子どもの発達全般を促進する魔法の杖のように思える。

・一方、現在のわが国では、学校風土という包括的な観点を重視するのではなく、いじめ問題を
単独で取り上げる傾向にある。~中略~
しかし、他にもある学校現場の問題、例えば、子どもの暴力、子どものうつ、不登校、自殺、発達障害支援
等との関連は明らかにされていない。もちろん、一方で大きな議論になっている学力との関連は明らかにされず
同時に語られることすらない。

・とくに教育行政関係者は学校風土へのアプローチを行うべきだ。実際、諸外国ではそれが当たり前になっている。
例えば、OECD(2013)のレポートでは、学校風土の重要性が取り上げられている。~中略~
学校風土をテーマにした研究はこの10年で、増加する一方である。

・アメリカを中心に学校風土改善のエビデンスがあるプログラムが開発されている。
学校風土改善プログラムの研究では、校内の人間関係をターゲットにしたもの31のうち、アメリカの研究が24,
イギリスが3、オーストラリアが2,ドイツが1、イタリアが1

我が国においては「学校風土」をタイトルに含んだ研究が散見されるものの、その多くが海外の動向をレビューした
文書研究、若しくは学校風土が大切であるとの意見を述べたものであり、海外のように学校風土改善を可能とする
プログラムは見当たらない。

これらのアプローチは、どちらも数年以上継続しなければならず、その点で日本では取り組みにくくなってしまうが
、これは日本の教育システムの問題だ。わが国では通常、校長は3年(長くても5年)程度で交代する。
教師の異動も頻度が高い。しかもこうしたプログラムを行うには、データ収集、専門家によるトレーニング、教材の確保などのための予算が必要であり、今の日本の教育システムでは、ハードルがかなり高いと言わざるを得ない。


# by ckdmhrbb | 2025-08-21 15:19 | 最近読んだ本より | Comments(0)

学校を変える いじめの科学  和久田 学より その10

第12章 保護者支援のデザインと方法ー何を知らせ、どう支援するのか

・子育てをするうえで最も大きなリスクは何かと聞かれたら、多くの人がいじめだと答えるかもしれない。~中略~
岡本(2005)による公立小中学校の教諭を対象にした調査によると、小学校教師の92%、中学校教師の100%が
いじめ指導の難しさを感じており、その難しさの1つとして、保護者との感情的な齟齬を挙げている。

・親は子どもに対して強い立場にある。その親が自らの力を振りかざし、弱者の立場にある子どもを力で支配したり
傷つけたりするならば、それはいじめ加害のモデルになる。反対にそうでない行動をとれば、子どもは加害者に
なりにくくなる。~中略~
子どもは親の行動を観察し、そこから学んでいる。体罰はもちろん、子どもの心を傷つけるような言動をせず、
𠮟るにしても「(親自身も子どもも)落ち着くのを待ってから話をする」ようなやり方がよい。~中略~
保護者が「相手に共感すること」「相手の気持ちを考えた問題解決をすること」をやってみせるならば、それは
子どもにとって大いに良い影響を与えるのである。

・いじめ加害のリスクを高める親の態度として、子どもの行動への無関心が挙げられる。これは同時に、子どもが
いじめは被害を受けていることを見逃すことにつながる。逆に子どもの行動に関心を持つことは、子どもの
いじめ加害を防止する。

・一般的な注意事項
*保護者の心配(懸念)を尊重し、しっかりと扱う
*保護者に対する窓口を決め、知らせておく
*加害者の保護者と被害者の保護者に別別に面談する

・いじめ加害者の保護者への支援
*誰が適切な面談者であるかを考える
*加害者の保護者が防御的、感情的になることを予測する
*加害者の保護者に感情的に反応しない
*いじめの加害に対しては、容認しない態度を貫く
*加害者である子どもをどう支援するかについて、具体的に話し合う
*加害者の保護者があまりにも興奮してしまった場合、面談を延期する

・いじめ被害者の保護者への支援
*慎重に話を聞く
*被害者である子どもの安全の確保に全力を尽くすことを保証する
*被害者である子どもをどう支援するのか、具体的に話し合う
*保護者との連携を密にする





# by ckdmhrbb | 2025-08-20 10:44 | 最近読んだ本より | Comments(0)
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1997年発足・子どものいじめを防止し命と安全を守る出前授業を実施しています。毎回のアンケート結果を公表します。


by Cepkodomohiroba
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