いじめを生む教室 荻上チキ
いじめナビの活動は、2012年にスタートしました。
当時は、滋賀県大津市で起きた中学2年生のいじめ自殺事件に
関する報道が過熱していた時期でした。
「自殺の練習をさせていた」「蜂の死骸を食べさせた」などの
断片的な情報や、加害者や教育委員会へのバッシングなどが広がり
センセーショナルなメディアイベントと化していました。
それは、どのような仕方であればいじめ問題を解決できるのかを
伝えるようなものではなく、「煽るだけ」「叩くだけ」の報道でした。
その光景には既視感がありました。
自分が小中学生だった1980年代後半ごろから90年代前半、
テレビで繰り返し取りざたされていたいじめ問題。
その頃、子どもだった私は毎日いじめられ続けていたので
いじめ報道をかじりついてみていました。そして落胆していました。
テレビは、学校にいない大人が、学校にいない大人に向けて
番組を作っています。
だから「学校ではこんなひどいことが起きているんですよ」と大騒ぎするけれど
現に学校に行きたくなくて休んでいて、その上でテレビを見ている自分のような
子どもには、役に立つ情報が何も提供されていなかったのです。
日本では1980年代からいじめが社会問題化しています。
しかしその間、メディアの報道は、ほとんど進歩してきませんでした。
一方でメディアには取り上げられずとも、日本でも世界でも30年以上にわたって
数々のいじめ研究が行われてきました。海外でもいじめ現象はあり、
その国ごとの研究が行われていますし、国際比較を行っている研究もあります。