ひとは「いじめ」をやめられない (中野信子より) その3
・2015年度に全国の小・中学校や高校などでのいじめの認知件数は22万5132件と
前年度を上回り過去最多、その一方で「重大事態」の発生件数は314件のみで
前年度を下回りました。
こうした結果を見てもやはり矛盾を感じるのです。
文科省としては、いじめや重大事態が発生したら速やかに報告してほしいと考えて
いるのかもしれません。しかし、別の言い方をすれば、いじめを認知件数がもっと
上がった方がよいと考えているのでしょうか?下がった方がよいと考えているの
でしょうか?いじめはないほうがよいけれども、もしあったら報告してほしいと
いうのはやはり矛盾したメッセージなのです。
もちろん、「いじめのない学校」を目指すことは学校の目標としては当然あるのでしょう
しかし、「いじめゼロ」を目指すということは、いじめはあってはならないことになります
だから、もしいじめがあっても、学校としては「いじめである」まして「重大事態である」
と認めることに慎重にならざるを得ません。
・学校でいじめの多い部活は何だと思いますか?教育評論家の尾木直樹さんが「いじめが
多い部活がある」というお話をされていたので私も驚いたのですが、それは吹奏楽部だと
いうことでした。
確かに吹奏楽部は同じ空間に一緒にいる時間も長く、目標は全員で音を合わせること。
つまりみんなの和を乱す人=悪となりがちです。さらに中学校では
「合唱コンクール」の練習をきっかけに学級崩壊やいじめが起こるケースも多いそうです。
・悩ましいのは、多くの人が、団結がいじめを生むし、愛情が強い程攻撃的になるし
仲間を大切にすることと戦争が実はリンクしているということを認められないことです。
いじめは悪い子だけがやるものだ。だから悪い子を正せばなくなるのだと思いがちですが
人間はそもそも理想的な存在ではないということを、まず前提として受け入れなければ
なりません。
現在は子どもたちは教室という逃げ場のない枠組みに押し込められ
「みんな仲良く」「みんなで力を合わせて」と要求されます。
「友だちがいないからといって悪いことではない」「みんなと違う考え方が悪いことではない」
という別の価値観を教えることがあってもよいのではないでしょうか